
IFRSの特徴をキーワードから読み解きます。IFRSに特徴的な用語を理解することによって、IFRSの知識が深まることを期待します。
◇IFRS (International Financial Reporting Standards)とは?
「国際財務報告基準」と訳され、狭義には、IASB(International Accounting Standard Board:国際会計基準審議会)によって設定される会計基準を意味します。一方、広義には、IASBの前身であるIASCによって設定されたIAS(International Accountding Standards:国際会計基準)、そして、IFRS解釈指針委員会(IFRIC)及びその前身である解釈指針委員会(SIC)によって発表された解釈指針をも含んだ総称として用いられ、「国際会計基準」と訳されることもあります。
- 第1回 Principles-based Accounting (原則主義会計)
- 第2回 Asset-Liability Approach(資産・負債アプローチ)
- 第3回 Comprehensive Income (包括利益)
- 第4回 Fair Value(公正価値)
- 第5回 Revaluation Model (再評価モデル)
- 第6回 Functional Currency (機能通貨)
- 第7回 Capital Maintenance (資本維持)
- 第8回 Relevance (目的適合性)
- 第9回 Faithful Representation (表現の忠実性)
- 第10回 Discontinued Operations (非継続事業)
第1回 Principles-based Accounting (原則主義会計)
IFRSの基本的な考え方を表す言葉が、Principles-based(プリンシプルズ・ベイスド)で原則主義と訳されています。これに対する言葉がRules-based(ルールズ・ベイスド)で規則主義や細則主義と訳され、現行の日本基準はこれに該当します。IFRSが導入されると、原則のみで細かい数値や規則がなく、個々の会社で判断しなくてはならないので、考えることに慣れていない日本人は大変だ、という話を耳にした方も多いと思います。
この原則主義という言葉、少し勉強されている方なら必ず耳にする言葉だと思いますので、今回はちょっと別の角度から解説します。
IFRSはEUに採択されたことで、名実ともに国際会計基準としての立場を確立しましたが、同時にそれまで自国基準を世界一と自負する米国が歩み寄る姿勢を見せたことで、さらにその立場は強固になりました。
エンロン、ワールドコムと続いた粉飾決算で、米国の会計基準が「世界一って言ってたけど、たいしたことなかったね」という評価になったことは、ご存知のとおり。その後、米国では様々な改革に着手しましたが、会計基準においては、いわゆる規則主義的な基準が大きな要因だったから方向転換しよう、という結論になりました。
例えば「5%までだったら、この基準は適用されない」という記述があると、基準の真の意図とは裏腹に、会計担当者はあの手この手を駆使し、何とか4.99%になるようにがんばり、監査人もその数値だけを見て「基準値を超えてないからOKです」ということになっていたわけです。ちなみに、こういう会計担当者をSECはレポートの中でFinancial engineer(ファイナンシャル・エンジニア)と揶揄しています。数字を作りだす人というニュアンスが伝わってきますね。
さて、このレポートの中には、「Principles-only」(原則のみ)の基準は使えない、という記述が出ています。この基準の目的はこうですよ、と定めた原則がきっちりあり、さらに現実に適用するための適度な解説がある、それが良い基準であり、今後米国の会計基準はそのような道をとるべきだと結論づけています。
この観点からすれば、IFRSは適用指針がかなり不足しているものもあり、実務では米国基準が参照されているくらいですから、未だ理想的な原則主義ではない、ということになりますね。
(2010.9.17)