
IFRSの特徴をキーワードから読み解きます。IFRSに特徴的な用語を理解することによって、IFRSの知識が深まることを期待します。
◇IFRS (International Financial Reporting Standards)とは?
「国際財務報告基準」と訳され、狭義には、IASB(International Accounting Standard Board:国際会計基準審議会)によって設定される会計基準を意味します。一方、広義には、IASBの前身であるIASCによって設定されたIAS(International Accountding Standards:国際会計基準)、そして、IFRS解釈指針委員会(IFRIC)及びその前身である解釈指針委員会(SIC)によって発表された解釈指針をも含んだ総称として用いられ、「国際会計基準」と訳されることもあります。
第9回 Faithful Representation (表現の忠実性)
前回に引き続き、概念フレームワークの話です。前回は、財務情報の最も重要な性質の一つは、目的適合性(relevance)であることを解説しました。それに加え、その情報は完全で(complete)中立で(neutral)かつ誤りがない(free from error)ものでなくてはなりません。この3つをまとめた性質をfaithful representation(フェイスフル・リプリゼンテイションと読みます)といい、これが今回のテーマです。
「表現の忠実性」と訳されますが、直訳すると、「事実に忠実な表現」となります。判断に資する情報であっても、誤解を招くような表現であったり量が十分でなかったりすると、利用者にとって役に立つ財務情報とは言えないのです。
さて、IFRSに基づいて作られた財務報告書は、良く言えば情報量が豊富、もっと直接的に言えば読むのが嫌になるくらい分厚いですが、その理由はこの性質に由来します。
原則主義の下、各企業は、それぞれの会計基準の具体的な適用を決めます。その内容を、個々の財務報告書において、利用者が理解できるように詳しく開示しなければなりません。原則主義ですから「基準書どおりに処理しています」では通らないのです。
また、「完全である」ことを追求すると、必要な情報が全て掲載されなくてはならないということですから、載せるか載せないか判断に迷うような情報については、その後の訴訟リスクを考え、とりあえず載せておこうという結論につながりがちです。
「誤りがない」ことについては、必ずしも完ぺきであることを要求しているわけではないと書いていますが、その例として次の文章が続きます。
For example, an estimate of an unobservable price or value cannot be determined to be accurate or inaccurate. However, a representation of that estimate can be faithful if the amount is described clearly and accurately as being as estimate, the nature and limitations of the estimating process are explained, and no errors have been made in selecting and applying an appropriate process for developing the estimate. (例えば、観察不能な価格や価値は正しいか正しくないか断定できない。しかしながら、その見積もりの表示については、もし、金額が見積もりとして明確かつ正確に表され、見積もりのプロセスの性質と限界が説明され、その見積もりに到達する適切なプロセスが選択適用される過程において誤りがなければ、忠実であると言えるだろう。)
Unobservable (観察不能な)とは、公正価値の会計基準で使われる用語です。この形容詞がつく値は、公正価値を算出するのに使われるインプットの中でも、最も信頼性の低いレベル3に位置づけられており、最小限の使用が推奨されています。このような値を使用するのであれば、それなりの分量の跡付けが必要ということですね。
結果、財務報告書はますます厚くなっていくわけです。読む方も大変ですが、言わずもがな、作る方はもっと大変です...
(2011.1.18)