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時事会計キーワード

タイムリーな会計トピックを、とある現役コンサルタントが独自の視点から解説します。
不定期に更新しています。

等伯

2011年10月3日

 日経新聞で欠かさず読むのは一番後ろの文化面くらいですが、最近は、連載小説の「等伯」が面白いので、いつもここから読んでいます。
 読んでいる方も多いと思いますが、安土桃山から江戸時代にかけて活躍した長谷川等伯という実在の画人の話です。順風満帆とは言えない波乱万丈の人生で、それだけに、どの逸話も興味深いです。絵にまつわる話はもとより、戦火の中では織田側の敵に追いつかれはらはらしたり、奥方が亡くなるくだりはけなげな人柄の最期に涙が流れそうになったり。
 さて、前置きが長くなりましたが、10月1日土曜日の朝刊の内容は、仕事柄うれしくなる内容だったので、ここに書くことにしました。

 10月1日の内容は、絵を売る店を始めていた等伯が、店の経営に詳しい知人の女性に来てもらう、というくだり。店は経営としては体をなしておらず、女性は、仕入れ代やお給料が書かれた帳簿がないと分かると「それではいくら経費がかかって、いくら利益が出たか分からない」と言い放ちます。それから、「びっしりと罫線を引いた帳簿」を取り出すのですが、これがなんと、複式簿記だと書いてあるのです。以下、引用します。

この頃の日本には、イタリアのヴェネツィアで開発された複式簿記がすでに伝わっている。油屋でもそれを用いて経営管理をしていたので、清子も身につけていたのであった。(2011年10月1日:日本経済新聞朝刊 安部龍太郎作『等伯』 )

 会計を生業とするものにとって、このような1500年代の日本の歴史小説で、複式簿記を目にする驚きとうれしさ。もちろん、このような複式簿記を身につけた女性が助けてくれれば、店の繁盛は間違いなしと、一層、話に引き込まれるのでした。

 

<了>

牛肉と国とイオン

2011年7月28日

 イオンが、国産牛肉の全頭検査を行い、検査をクリアした肉だけを販売すると発表しました。かかったコストは価格に上乗せしないそうです。

 イオンのニュースリリースによると、「トップバリュ 国産黒毛和牛」というプライベートブランドの商品に対し、「すでに、7月13日から同商品向けに出荷された牛について検査を開始しており、7月28日より関東地区の「イオン」「マックスバリュ」計115店舗にて、同全頭検査を実施した商品を展開する」とのこと。さらに「今後、生産者の方々のご協力を得て、出荷量を現在の2倍近くに拡大し、全国の「イオン」「マックスバリュ」全店計1,000店舗に展開を拡大いたします」と書かれています。
 ニュースリリースの最後には、イオンがオーストラリア・タスマニアの直営牧場で育てる「タスマニアビーフ」のことが書かれています。抗生物質等を使用せず、自然の穀物だけで育てているそうです。タスマニアビーフもおいしそうですね。
 他の流通大手も続く見通しとのこと。しばらく牛肉は食べられないとあきらめていましたが、これで何とかなりそうです。

これに先立つ農林水産省の畜産業への対応策は汚染稲わらの流通を防げなかったこととも相まって批判を浴びています。農林水産省だけでなく3月11日以降、ありとあらゆる国の対策は批判されています。確かに政府の対策は、場当たり的だし遅いしで批判したくもなりますが、そんなときはジョン・F・ケネディの演説を思い出しましょう。

Ask not what your country can do for you. Ask what you can do for your country.
(国があなたに何をしてくれるのか尋ねるのをやめましょう。あなたが国のために何ができるかを考えましょう。)

 イオンは間違いなくケネディに褒められそうです。

 

<了>

市役所界のトヨタを目指せ

2011年2月8日

 河村たかし氏が名古屋市長に再選しました。河村市長が代表を務める減税日本の政策はシンプルです。公式サイトによると次のとおり。

  • ・日本初!市民税減税 市民税の恒久的な10%減税
  • ・選挙で選ばれる、ボランティアの市民が、市予算の使い道の一部を決める「地域委員会」の創設
  • ・議員報酬の半減

 え、これだけ? 名古屋の将来像への言及もなく、委員会の創設と削減のみの政策。パフォーマンスだけと言われるのもうなずけます。実際に10%の減税は実現可能性が低いとして批判を浴びています。

 が、見方を変えてみると、これはこれでありかな、と思えてきました。
 現状からの積み上げベースで物事を考えると、何事も削減は難しいものです。しかし、まず10%予算がなくなる、という前提で考えると、根本的に発想を変えざるを得ず、思い切ったアイデアがでてくる可能性もあります。(もちろん、減税を好感した企業や裕福な市民の移転などで、将来的に税収が増える可能性もありますが、それはさておき。)

 名古屋といえば、トヨタ自動車。トヨタの原価の設定は、積み上げ式ではなく、想定した売値から逆算する方法です。競争の激しい自動車業界、売値は下がっていきますから、目標となる原価もどんどん低くなります。それを達成すべく、設計を見直すなどの抜本的な改革が定期的に行われるといいます。 

 市民サービスと営利目的の企業は違う、という意見もあるかもしれません。しかし、根本的に発想を見直すことや、品質を維持したままでコストを削減する手法のお手本として、見習うところはたくさんあると考えます。

 いずれ、名古屋では、トヨタと名古屋市役所の二つが優れたコストダウンの代名詞になる日がくるかもしれません。そんな日を期待して名古屋市職員の皆さんにエールを送りたいと思います。

 

<了>

法人税5%引き下げの英断

2010年12月15日

 法人税の実効税率を現在の40%強から5%引き下げることがほぼ決まったようです。財源がないなど否定的な意見もあるようですが、筆者は管総理の決断を支持したいと思います。

 今回の法人税減税は、すべての黒字を出している企業に利益をもたらすものです。「赤字で苦しんでいる企業には恩恵がない」との声も聞かれますが、そもそも、赤字を出し続けるような企業は経営能力が低いもしくは市場ニーズに適合しないので、市場から退散するのが筋です。このような企業まで優遇することは、日本航空への援助と同じくらい、馬鹿げた税金の使い方です。

 「法人税の減税をしても、企業は内部留保を積み立てるだけで減税分の経済効果はない」との意見もあるようですが、このような批判は企業経営を知らない机上の空論です。現在の黒字は将来の黒字を保証するものではなく、今後も黒字を出し続けるために積極的な投資は必須であり、このことを知らない経営者はいません。

 高速道路の無料化など財源確保のため見直すべき政策もあります。限られた税金ですから、お金を生み出す力のあるところに集中的に回すのが有効な使い途となり、最終的には日本経済全体の発展に貢献することは明らかです。

 

<了>

ボンド

2010年11月10日

 会社にとって「お金」は血液のようなもの。表からはなかなか見えませんが、ぐるぐる回っていないと会社は倒産してしまいます。経営者にとって、売上よりも気になるのが、現実の現金残高なのです。

 さて、今日の日経新聞朝刊のトップ記事は、そのお金を調達してくる先が増えたというすてきな話。東証が来春、「東京プロボンドマーケット」という名の社債の国際市場を創設するのです。
 ご存じのとおり、ボンド(bond)とは社債のこと。プロが頭につくのは、参加できる投資家が銀行や保険会社といったプロの機関投資家に限られているから。プロが相手になるので、社債発行に伴う情報開示は一般を対象にするより限定的になります。このことにより、発行する側の企業にとっては、低コストで適時の社債発行が可能になるという大きなメリットがあります。
 例えば、もともと株式で資金調達を予定していた会社が、株価が低迷して株式を発行できそうもない、というような時でも、「じゃあ高い金利で社債を発行しよう」となり、投資家も「株は魅力ないけど、社債なら買ってもいっか」ということになり、予定どおりの金額を集められる可能性が高まるのです。

 さて、今まで日本ではこのような良い社債市場がなかったため、社債は株式ほど知名度がありません。セミナーなどで「負債」の例を出すときに、「銀行借入」というと10人中10人が納得するのですが、「社債」というと5人は首をひねります。もちろん、簿記や会計の勉強をしたことのある人なら名前や仕訳の方法はわかっているでしょうが、実務で扱ったことがない、という方が多いのです。
 しかし、ボンドと言えば、木工用ボンドでもなく、ジェームス・ボンドでもなく、社債、という日がもうそこまで来ているのです・・・失礼しました(-_-;)

 

<了>

三井住友FG、NY証券取引所へ株式上場

2010年10月22日

 三井住友フィナンシャルグループがニューヨーク証券取引所に上場すると発表しました。 現在、米国証券取引委員会(SEC)に書類を提出中で、11月1日に上場する予定とのことです。みずほと三菱UFJはすでに上場していますから、日本の3大銀行が出そろうことになりました。

 先に上場した2行は、米国会計基準ですが、三井住友はIFRSでの上場です。米国では、外国企業について2007年からIFRSによる提出を認めているのです。三井住友はこれを利用し、日本における適用もかねて、IFRSでの財務諸表の作成ということになったのでしょう。

 日本では、IFRSの任意適用ははじまっていますが、上場企業にIFRSを義務付けるかどうかの判断は2012年に行うこととなっており、早ければ2015年3月期からの強制適用がはじまることになります。
 2010年3月期決算でIFRSによる財務諸表を公表した企業はわずか日本電波工業だけでしたが、JT、住友商事、日産自動車など2011年や2012年のスタートを公表した会社もあり、水面下では着々と準備を整えつつある企業の噂が聞こえてきています。来年あたりからIFRSの財務諸表を見る機会が増えていきそうですね。

 

<了>

概念フレームワーク

2010年9月30日

 IFRS・米国会計基準共通の、新しい「概念フレームワーク(conceptual framework)」の第一フェーズ完成が公表されました。

 ご存じのように、概念フレームワークそのものは会計基準ではありませんが、財務諸表がどうあるべきか、から始まり、資産・負債といった基本的な用語の定義もなされており、全ての会計基準の拠り所となるものです。とはいうものの、この概念フレームワーク、その名のとおり、概念的なものなので、正直言って、2,3度読んだくらいでは何のことだか、さっぱりわからない部分もあります。閑話休題。

 さて、今日のテーマは、概念フレームワークのチャプター1、つまり概念フレームワークの最も基本的なところです。財務報告はその利用者に有用な情報でなくてはならないが、そもそもその利用者とは誰か。これに対する答えが、以前はかなり広く利用者を想定していましたが、新しいフレームワークでは、次のように明確に資金の出し手を重視する姿勢となっています。

existing and potential investors, lenders and other creditors in making decisions about providing resources to the entity
(事業体に資源を提供するかどうかの意思決定を行う既存及び潜在的な投資家・貸手及びその他の債権者)

 リーマンショックから、ギリシャ経済の破綻と、金融危機は続いています。金融の安定は、各国の市民の生活に直結する最重要課題です。IFRSという会計基準は、このような金融の安定に寄与すべく、今後は、投資家の立場に立って、各企業の投資価値を正しく測定するものになっていくのだ、ということがわかります。資産・負債アプローチ、そして、資産・負債の測定に対する公正価値の採用は、その流れに沿うものです。

 とはいえ、一般的に投資家と言えば、短期で株式を売買し利ザヤを狙う投資家も大勢で、あまりにも、そこに力点を置くと、長期的な企業の成長が失われてしまいます。概念フレームワークには、長期的な投資家か短期的な投資家かという区別は出てきませんが、少なくとも、4半期に一回、財務諸表を公表し、そこで意思決定が可能であるように公正価値を採用するなどということを考えると、まず長期的な投資を促すような会計基準にはならないでしょう。

 会計は企業の業績を図るもの、と習ってきたほとんどの人にとっては、IFRSはかなり違和感がある会計基準となってきています。しかし、IFRSの採用が、優良企業にとっては世界的な資金調達を容易にし(というより、採用しないと資金調達が困難になる)、間接的に金融の安定に貢献するのは間違いありません。

 一方で、それによって作られる財務諸表はどういう意味を持つのか、収益や利益の意味を適切にとらえられるように、作る方も(短期の投資家以外の)読む方も訓練が必要となりそうです。それには、まず、この概念フレームワーク、腰を据えて読まなければなりませんね(まずは自分に対して言っています)。

 

<了>

オペレーティング・リースの資産・負債計上

2010年8月19日

 IFRSと米国会計基準で、新しいリース会計の公開草案(exposure draft)が公表されました。現在はコメントを募集中で、来年中頃に成立する予定となっています。
 これまでは、リースで設備や機械を借りると、まず、ファイナンス・リース(米国ではキャピタル・リース)かオペレーティング・リースかに分類し、前者については「実質的に資産を買ったのと同じである」ということで、バランス・シートに資産と同額の負債計上が義務付けられていましたが、後者は「実質的に賃借している状況である」として、支払うリース費用を賃借料として計上するのみでした。公開草案では、これらの区分を撤去し、リースであれば一律資産・負債計上、すなわちオペレーティング・リースについても資産・負債計上を求めるというものです。

 ファイナンス・リースに区分されると、資産・負債の金額が増えるので、自己資本比率、ROAなどの財務数値が悪化することになります。そのため、契約に工夫を凝らし、何とかオペレーティング・リースに分類されるように画策する企業も多く存在します。理屈の上では、「実質的に購入である」あるいは「実質的に賃貸である」という区分ができるものの、これを現実にあてはめると限りなくグレーなゾーンが出現し、ほんのわずかな違いを利用した恣意的な分類が可能になっているのです。
 会計上はファイナンス・リースとオペレーティング・リースに区分されていても、実際にはその設備や機械がないと事業ができないわけですし、使用するという実態は同じです。それなら、両方とも同じ会計処理にしてしまったほうが、投資家にとってわかりやすい財務諸表となるじゃないかということで、こんな処理が提案されているわけですね。

 8月19日の日経新聞に、オペレーティング・リースの利用が多い企業の一覧が掲載されています。これを見ると、トップ3社(レオパレス・大東建託・東建コーポレーション)は、なんと1兆円を超えています。そのほか、イオン、セブン&アイといった店舗の土地・建物をリースしている小売大手、あるいは、日本郵船、商船三井、ANAなどの船舶・航空機をリースしている企業などが、1,000億円を超える金額のオペレーティング・リースを利用しているとされています。
 こういった企業は、IFRS導入に向け戦々恐々かと思いますが、これを機に財務体質の改善を図ってくれると、投資家にとっては一石二鳥ですね。

 

<了>

財務会計士

2010年8月2日

 金融庁が公表した公認会計士制度改革に関する中間報告書案に、「財務会計士」という耳慣れない名称が登場しました。筆記試験に合格し、監査法人や企業などで3年程度の実務経験を積んだ人に与えられるそうです。さらに、追加の実務経験と監査技能を身につける実務補修を修了すれば、「公認会計士」として登録できるとのことです。

 新制度の背景には、最近の公認会計士試験の合格者の相当数が、監査法人への就職がかなわず、せっかく試験に合格したにもかかわらず公認会計士の資格を取れない可能性が高いという現状があります。こうした人々が、今後、監査法人ではなく、会計知識を持ったプロフェッショナルとして一般企業でキャリアを積むことを模索するための仕組みと考えることもできます。

 しかし、一般企業の経理や会計部門に就職するためには、日商簿記2級程度の資格がもっとも適当とされる現実があります。それ以上の資格を持っていても、実務経験を伴わない限り「頭でっかちで使いづらい」と考えられていますから、一般企業への就職が進むかどうかは果てしなく???です。

 財務会計士の試験は、受験勉強に邁進する学生が合格するような試験ではなく、経理・会計のキャリアを積んだ実務家が合格するような、実務的な試験となってほしいものです。ただ、先に筆記試験がある限り、そのハードルはかなり高いような気がしますので、思い切って先に実務経験を持ってきたら、と思うのですが、どうでしょうかね。公認会計士もそこからさらに選抜をかけるような仕組みにすると、質は上がりこそすれ、決して下がる気はしないのですが。

 

<了>

英語

2010年7月12日

 ホンダの伊東社長が、「グローバル企業なのだから、英語を公用語にすべきでは?」と記者に尋ねられ、「英語は必要なときに使えばいい。日本人が集まる中で英語なんて、バカな話はない」と至極まっとうな返答をしたらしいですね。

 ホンダのような大企業とは比較にならないほど小さいわが社でも、外国人を採用しています。海外取引先もあるので、会議や資料は英語と日本語のちゃんぽんですし、ほとんどの社員が英語を話しますが、日本人だけのときは日本語で話します。だって、それが自然ですから。そう、伊東社長のおっしゃるとおり、英語は必要なときに使えばいいのです。

 コミュニケーションにおいて、言葉はほんの一部にすぎません。英語ができたって通じないものは通じないんです。それよりも、ある言い方で通じない時に、通じていないということを理解して別の表現に直せるような機転がきくか(図や絵を描いたり、身振り・手振りも含みます)が重要だし、そもそも、どうしても相手にわかってもらいたいという気持ちが、なにより大切です。

 TOEICのスコアは500点未満でも、現地で一からオフィスを立ち上げたり、大きな商談をまとめたりという話はよくありますが、そんな海外でビジネスを成功させた方々の英語を聞くにつけ思うのは、「説得力があるな」ということです。よく聞けば、文法はめちゃくちゃだし発音もおかしいのですが、単語の選び方が適切だし、何より自信にあふれた態度が相手を「聞こう」という気にさせるのです。

 英語で苦労した経験から、子供に英語を習わせる親も多いと聞きます。しかし、早期に英語を習わせるよりも、日本語で表現力を磨き、いろんな経験をしてから英語を習わせたほうが、よっぽどいい英語がしゃべれるようになるのではないかと思います。いくら発音がよくても、中身がなければ相手は聞いてくれませんからね。

 

<了>

消費税増税

2010年7月12日

 先日の参院選でも争点の一つになった、10%の消費税。消費者の立場でこれを考えれば、10,000円のものを買うときに1,000円も余分に支払わなければならないわけで、明らかにかなりの負担増です。

 企業の立場にたってみても、負担が増えることに変わりはありません。消費の落ち込みによる売上の減少が懸念されるので、売上の減少を避けるために実質消費税分の利益を減らすことになる可能性が高いでしょう。その上、納税時の現金の確保や一時的な事務作業の増加など、決して歓迎すべきことではありません。
 とはいえ、G20でも話題になったように、日本の財政赤字は先進国の中でも最悪レベル。赤字国債をこれ以上発行しないためには、消費税アップは避けられないでしょう。(法人税は他国と比べても高すぎるので、これを上げるのは論外ですし。)

 それにしても、これだけの負担増を求めるわけですから、政府には消費税アップ分の使い道をはっきりさせてほしいものです。福祉に使われるのならともかく、税金を納めない(あるいは納められない)会社を永らえさせるために、苦労して得た稼ぎから払う税金が使われるのは、たまったものではありません。

 

<了>

役員報酬の開示

2010年6月18日

 内閣府令で、上場企業に対する「1億円以上の役員報酬の開示」の義務が定められました。
 これに関して、資生堂が、1億円未満である副社長の報酬額まで株主総会前に公表して話題になりましたが、このような開示に積極的な企業はごくごく一部のようで、各企業では対応に苦慮しているようです。

 日本では、歴史ある一部上場企業でも1億円を超える報酬は珍しく、国際的に見ると決して高くはありません。一方で、たとえ働きぶりが悪くても、定期昇進・昇給に守られた部長職が法外に高い給与を得ることがあります。役員が担う職責を考えれば、日本の役員報酬は相対的に低いといえます。
 とはいえ、上場企業は広く投資家から資金を集めます。よって、投資家の判断材料になるデータを提供するのは、上場企業として当然のことといえます。

 この開示情報は、有価証券報告書に記載することが義務づけられています。しかし、その前に公表したり、株主総会で答えたりするかどうかは、各企業の判断にまかされています。そのため、資生堂のように事前に金額を公表した企業はほとんどありません。
 また、株主総会で株主から質問が出た場合に答えるかどうかについては、ここまで多くの企業が「未定」としていました。ところが、今日行われたソニーの株主総会では、ストリンガー会長兼社長が株主の質問に対して金額を答えました。

 右へならえ、の日本企業。来週から続々と株主総会が開かれますが、「ソニーが公表したから」ではなく、報酬に見合った働きをアピールし、堂々と胸をはって金額を開示してもらいたいものです。

 

<了>

包括利益と当期純利益

2010年6月3日

 今日の日経新聞朝刊の投資・財務欄は、すっかりおなじみになったIFRS。「IFRSと日本基準の共通化」に関連したコラムで、2011年3月期末から導入を検討している包括利益の開示について、連結財務諸表だけでなく単体の財務諸表にも適用することに関して賛否両論がある、という内容でした。

 包括利益は、IFRSの日本への導入というテーマの中で注目をあびてきましたが、IFRSや米国会計基準では以前からおなじみの利益です。例えば米国では、1997年の段階で、すでに包括利益を開示するための会計基準が作られています。

 これまでの考え方だと、利益は、損益計算書の売上から費用を引いてもとめる(こうして計算されるのが当期純利益)ものでした。これに対して、現在のIFRSや米国会計基準では、すべての資産と負債の変動の差額が利益である(こうして計算されるのが包括利益)、という考え方です。そして、この考え方を採った場合、これまでより利益に入る範囲が広くなるという違いがでてきます。
 一方、利益の開示については、IFRSや米国会計基準でも、現時点では日本と同じく当期純利益を開示しています。しかし、それに加えて、そこに入らない損益も含めた包括利益を開示しています。

 当期純利益に含まれず包括利益に入る項目は、そんなに多くはありません。とはいえ、持ち合い株の評価損益がここに入ってくるので、株式持ち合いを多く行っている会社には大きな影響が出てくるでしょう。

 ちなみに、米国会計基準では、そのような株の評価損益も、当期純利益に含めようとする新しい基準が提案されています(現在は選択できる)。包括利益だなんだと言っていられる今のうちが、花かもしれませんね。

<了>

社債、国債、金利

2010年5月20日

 今日の日経新聞の投資・財務欄に、企業の社債発行が増加しているとの記事がでていました。金融緩和で長期金利が低迷する一方、機関投資家の需要が増えているためと解説しています。

 社債の金利は、発行する会社と期間によって違ってきます。発行会社のリスクが高くなるほど、金利は高くなります。この場合のリスクとは、簡単に言うと金利を払えそうか、社債を償還できそうかどうかという確率です。また、期間が長くなっても、このリスクは高まるので、金利は上昇します。

 4月下旬に5年物の社債を発行したプロミス、全日空、NTTデータの金利を見てみると、プロミスが3.5%、全日空が1.7%、NTTデータ0.66%となっています。つまりリスクは、プロミス > 全日空 > NTTデータ の順に高いことを意味します。
 資金調達を行う企業にとっては、金利は安いにこしたことはありません。しかし、競争の激しい業界や新しい事業分野はどうしてもリスクが高くなるので、金利も相応に高くなります。

 とはいえ、金利が高いから悪いわけではありません。ようは、金利以上の儲けを出せればいいわけです。お金を出すほうからすれば、もっとリスクをとってでも大きなリターンを求めたい、という場合だって当然あるわけですから。

 ちなみにもっともリスクの低い債券は、国が支払いを保証している国債です。5月21日に発行された5年物の国債は利回りが0.453%。しかし、財政は悪化する一方で、有効な手がまったく打てていないうえに、郵政改革を後戻りさせて、国債を買い支えようとする姑息な政策すら見えます。こんな状況で、本当に将来払い戻すことができるのでしょうか。実感としては、優良企業の社債のリスクの方が低そうです。

<了>

スポンジテク社の株価操作と内部統制(米国)

2010年5月7日

 米国のSEC(証券取引委員会)は、5月5日、スポンジテク・デリバリー・システムズという会社とその社長を含む幹部社員を、大規模な株価操作を行って投資家を欺いた容疑で告発しました。

 スポンジテク社はいわゆる粉飾決算によって売上を良く見せていたのですが、この売上金額の実に99%が粉飾だったとのことです。その手口は、架空の顧客を作り出し、その顧客に対して売上を計上していたように見せかけるというものでした。
 同時に、このような新規顧客を獲得したとか、業績が向上するといった嘘のプレスリリースを頻繁に出し、投資家の注目を集めました。株価が上昇する一方で、同社の社長や幹部社員は、密かに大量の株を売却し、大金を得ていたのです。

 ところで、このような株価操作を英語ではpump-and-dump scheme(ポンプ・アンド・ダンプ・スキーム)といいます。不正な手段で株への需要を膨らませ(pump)、株価が上がったところで関係者が売却して(dump)大金を得るからです。語呂が良いので覚えやすい表現ですが、ダンプという言葉からは(恋人を捨てるという意味で使われることもあります)、投資家と会社をないがしろにする経営者の姿勢が伝わってきます。

 米国では、2002年の企業改革法により、より厳しい責任が経営者に問われるようになり、不正は起こりにくくなったと考えられています。スポンジテク社の場合も、上場していたわけですからそれなりのハードルをクリアしているはずです。また、同社の社内倫理規定には、「法律の遵守」や「公正な取引」など、立派な言葉が並んでいます。
 しかし、このような事件を考えると、形や表面だけ整えることはできても、経営陣に人間としての倫理観が欠如していれば、内部統制は機能しないことがわかります。

<了>

全国学力テストと会計能力

2010年4月21日

 全国学力テストの問題が公表されました。小学生の算数の問題を見てみると、買い物に行った時の割引の計算など、現実の生活に役立つ問題が随所にみられます。しかも、単純に結果を計算させるのではなく、その解答の理由を言葉や式を使って説明しましょう、と指示があるものもあります。
 学力テストに参加することの意義についてはともかく、問題としては、いい問題ではないかと思います。計算そのものも役に立ちそうですが、論理的に説明できる力も日常生活に役立ちそうです。

 会計やファイナンスでは、数式を用いることが稀ではありません。そのため、これらに関するセミナーや研修では、参加者自ら単純な計算を行うことがあります。そういった場面で明らかに感じるのは、分数を苦手にしている参加者の方の多さです。
 ただし、これについては世代によって違いが見られます。40代以上の世代では、「算数は苦手で。。。」という方でも計算自体はこなしますが、20代から30代前半にかけての世代では、本当にちんぷんかんぷんという面持ちの方が少なくありません。「ゆとり教育」や極端な入試科目の影響については賛否ありますが、現実に数学・算数が苦手な方が多い世代であるという印象はあります。
 しかし、そういった世代間の差よりも重要な問題があります。それは、手っ取り早く答えを欲しがるという、世代を問わず日本人全体に広く見られる傾向です。式の意味を理解せずに答えだけを知っても、その式の応用力を身につけることができません。千変万化する実務の世界では、知識の応用力こそが問われるのですが。。。

 これまでの日本の教育は、詰め込み型で思考能力をほとんど育成していません。学力テストの問題を見て、今後、日本の教育が変わっていくことに期待したいと考えました。

<了>

研究開発費の会計処理

2010年3月29日

 東芝とビル・ゲイツ氏が支援する米国ベンチャー、テラパワーが、次世代原子炉の共同開発を進めると発表しました。2020年代に実用化を目指すこの次世代原子炉は、建設・運転コストが安いだけでなく、環境にも優しい技術とのことです。とはいえ、実用化に10年かかるのであれば、その間は売上がたたず、莫大なコストのみがこの先端技術の研究と開発(R & D)にかかることになります。

 人件費、原材料費、固定資産の減価償却費など、様々な費用が含まれるこの研究開発費、日本では「発生時に費用とする」こととなっています。なぜならば、研究開発費はその目指すべき効果、例えば売上とのタイムラグが大きく、そもそも売上が上がるのかどうかさえわからないためです。
 それでも、以前は費用処理と資産計上が選択できました。しかし、米国では一律に費用処理となっていたこともあり、比較可能性の観点から費用処理に一本化されています。

 一方、IFRSでは、研究段階における支出は米国・日本と同じく費用処理です。しかし、開発段階における支出については、技術上の実現可能性など一定の条件を満たす場合、資産化して償却を行わなければなりません。
 研究開発費の本質は、自社で生み出した無形固定資産です。外部から取得した無形固定資産が資産計上されるのであれば、自社で生み出された無形固定資産もそれに準ずるべきとの考えがその背景にあります。
 ただし、無形固定資産を資産計上するには、将来の経済的便益(future economic benefits)が得られる可能性が高いことが条件となります。研究段階における支出はこれが不明確なため、資産計上が行われません。

 また、企業が生み出す真の付加価値を算出するために考えられた利益の概念として、スターン・スチュアート社のEVA ™があります。このEVAでは、研究開発費は、他の無形固定資産と同様に資産化して償却を行うことが要求されています。
 日本航空の社長に就任した稲盛氏が、京セラの研究開発について、「わが社の研究開発は100%成功します。なぜなら、成功するまでやり続けるからです」と著書で述べられています。そもそも失敗を目的に研究開発を行う企業はありません。経営者の恣意的な濫用がなく、研究開発費の範囲が明確であれば、その資産計上は、理屈にかなった会計処理と言えるでしょう。

<了>

民間企業の経営的視点から見た23区の職員採用

2010年3月10日

 今朝の日本経済新聞の地域面(東京地方)に、2011年度の東京23区の職員採用予定が993人となり、過去最多であるとの記事が出ていました。団塊世代の職員が大量に退職するため、その補充として採用するとのことです。

 民間企業の視点からこれを見ると、信じがたい内容と言わざるを得ません。
 民間企業の採用動向は、景気とともに変動します(もちろん、民間企業でも長期的視点に欠けるという問題はあります)。近年のように、景気が低迷して売上の増加が見込めない状況であれば、企業は採用をひかえるようになります。大量に退職が起こったとしても、その分をそっくり補充しようなどという発想はまずでてきません。効率よく仕事をこなし、一人一人の生産性を高めるための工夫を凝らすことになります。

 区のお金の源泉は税収です。これを区は企業業績に大きく依存しており、不況の影響で昨年来より厳しい財政状態が続いています。また、今後、税収が伸びない可能性も大です。
 このような状況で、職員の数と待遇を維持し続けようと考える発想は、大変危険です。いったん採用してしまえば、下方硬直的な公務員の給与を削減するのは、民間以上に困難です。税収が伸びない場合、これを賄うために税率を上げることになるのでしょうが、そうなると民間はますます疲弊、そして税収が不足するという悪循環に陥ってしまいます。

 もちろん、待機児童対策などのように人手がまだまだ必要な分野もあるでしょう。しかし、それは民間とて同じことです。
 自治体と民間が異なるのは、いらない分野からいる分野へ、流動的に人を動かせることです。単純に人を増やすのではなく、繁忙期を平準化するための工夫や、一人の社員が異なる種類の複数の業務をこなせるようにする工夫も行っています。なぜならば、「予測される収入」の範囲でやりくりを行うことが、企業会計の基本だからです。

 予算と業務の硬直化は、区のみならず国やあらゆる自治体で問題です。企業でも、同じような問題は起こりますが、その場合、企業は結果として倒産に至ります。
 企業が倒産するように、自治体が破綻してしまった時の影響は甚大です。夕張市の例を見るまでもなく、住民生活に多大な負担を要求することになるのは、火を見るより明らかです。誰の為の自治体なのか、当たり前の前提を忘れてはなりません。

<了>

希望退職制度と人件費

2010年3月4日

 消費者選好の変化に長引く不況が追い打ちをかけ、百貨店業界全体が業績不振に喘いでいます。この苦境への対策として、昨年末から近鉄百貨店、松屋、三越などが行った希望退職者の募集に対し、予定以上の人員が応募してきたことが話題になっています。

 予定通りに希望退職者が集まれば、企業は費用を圧縮することが出来ます。費用は「企業資産の流出、もしくは価値の減少」です。人件費を減らすことで、企業は会社資産の流出を抑え、体力を温存することができます。

 そうはいっても、人件費を減らすことは、自分で自分の首を絞めることにもなりかねません。
 従業員に支払う給与という費用は、労働の対価というだけではなく、企業の生産力を表す数字でもあります。そして、企業は生産力を発揮することで付加価値を創出し、利益を生み出します。よって、従業員は利益の源泉であり、その従業員を減らすことは利益を生み出す力をも減らすことになるわけです。

 とはいえ、従業員一人一人が持つスキルや経験といったものは、財務諸表には現れません。生産性の観点からインプットとアウトプットの金額を捉えることはできても、その過程に働いている人間の力を直接的に貨幣価値で表現することはできません。その結果、貴重な生産力が十分に評価されないまま流出してしまう、ということもあり得るわけです。

 先週奇しくも、リストラされた社員を活かすというテーマのドラマが、立て続けに放送されました。現実の世界では、雇用を削減することなく不況を克服している企業が存在しています。会社の宝をどのように生かしていくか、この問題に対する解答こそ、光を見出す糸口になるのではないでしょうか。

<了>

棚卸資産評価損と特別損失

2010年3月2日

 3月1日、マンション開発の総和地所は、2期連続で債務超過となることが明らかになったため、ジャスダックを上場廃止になる予定であると発表しました。
 債務超過とは、資本がマイナスとなっている、つまり、累積した赤字が資本金(資本準備金)の額を超えてしまった状態のことです。同社によると、その原因は、引き下げを行った不動産価格の金額が帳簿価額を大幅に下回ったことにあります。
  実際に21年2月期の決算短信を見ると、24億円ものたな卸資産の評価損が特別損失に計上されています。これが38億円の当期純損失をもたらし、2期連続の債務超過になってしまったのです。

 ところで、今期多額の棚卸資産評価損を計上しているのは、総和地所だけではありません。ほとんどの不動産販売会社が、棚卸資産評価損の計上を行っています。ところが、これらの会社の多くでは、この評価損の処理方法が異なっています。総和地所のように評価損を特別損失とするのではなく、売上原価に含めているのです。

 たな卸資産の会計処理は、平成20年(2008年)4月1日以降に始まる事業年度から、実質的に低価法が強制適用されています。この場合、たな卸資産の価値が下落している時には、正味売却価額、すなわち現実的な売却価格から直接経費を引いた金額をもって、貸借対照表に計上します。その際、切り下げた金額は、売上原価または製造原価に含めなくてはなりません。
 切り下げた金額(評価損)が特別損失に計上された場合、影響がでるのは当期純利益のみです。しかし、売上原価に含めると、売上総利益や営業利益、経常利益にいたるまで悪化してしまいます。経営への影響は小さくありません。

 売上との対比という観点から考えれば、たな卸資産とは、それが売れるまで、つまり売上原価として費用化されるまでの間、とりあえず資産計上しているだけのものです(それ故に費用性資産と呼ばれます)。よって、売上原価への計上は至極妥当な処理と言えます。そのため、IFRSや米国基準では以前から同様の表示を義務付けており、日本もこれに倣った格好になります。

<了>

ローソンエンターメディアと監査

2010年2月10日

 ローソンの子会社であるローソンエンターメディア(LEM)の役員による、150億円もの不正なお金の流れが報じられています。LEM社の当期純利益は5億円、純資産は64億円ですから、会社の規模にくらべてかなりの大金が動いたことになります。
  また、このLEM社自身がジャスダックに上場しており、今後各方面に大きな影響を及ぼすと考えられます。

 この不正に深く関与しているとして、現在、プレジールという名前の会社が取り沙汰されています。

 ローソン本体の調査によると、2007年(H19年)11月から、それまでLEMが直接おこなっていたコンサート企画会社に対する代金支払いを、プレジール経由で行うようになったそうです。

 本来、そういった取引の流れについては、主要な会社名も含めて有価証券報告書上で報告しなければなりません。ところが、ローソンエンタ社の2009年 (H21年)2月末の有価証券報告書では、プレジールについて一言もふれられていません。

 例えば、2008年10月と11月、LEMはプレジール社が企画会社に支払うべき23億円を肩代わりしています。このとき作成された「債務弁済公正証書」には、同年末までに支払ってもらう旨が記載されているそうです。ところが、そのお金は返済されなかったようです。

 こういった事実が、2009年の有価証券報告書に一切記載されていないのです。にもかかわらず、LEMに対する監査報告書には、「無限定適正意見」が出されています。

 監査の限界説が説かれる一方で、近年は監査人の責任が問われるケースが多くなってきました。どんな場合であっても、決算書に一番の責任を持つのは経営者です。しかし、この事件についても、監査人にはそれなりの責任が求められることになりそうです。

<了>

トヨタのリコール問題と引当金(その2)

2010年2月10日

 引当金を設定するには、将来発生する可能性が高くて、その金額を合理的に見積もることができなければなりません。とはいえ、製品保証やリコールなどの品質関連費用は、予測や見積りをするにあたって不確実性がつきものです。

 このうち、製品保証は販売促進の一環であり、いわゆるアフターコストであると考えられます。いつ、いくらその費用が発生するかわからないとしても、購入者が修理を求めてくることは十分予想できますし、過去の経験からその金額を合理的に見積もることもできます。よって、製品保証については、販売した期に引当金として計上することができます。

 一方、リコールは本来あってはならないものですし、その可能性や規模、損失額を販売した時点で予測するには、実務レベルでの難しい判断が必要になってきます。

 トヨタの場合、製品保証引当金とは別に見積もって、リコール費用を引当金として計上しているようです。米国基準(トヨタは連結財務諸表を米国基準で作成しています)で考えれば、販売時点でリコール発生の見込みが低い場合、それを引当金として計上することはできません。よって、リコール発生の可能性が高いとマネジメントが判断した時点で、引当金として計上しているものと考えられます。

 実際にトヨタのマネジメントがどのような見積りを行っているのか定かではありませんが、メディアの報道によれば、リコールに対しては十分な引当金が存在するとのことでした。しかし、今週新たにプリウスの問題までもがリコールに発展してしまい、もはや一連の騒動が及ぼす業績への影響は避けられそうにありません。

<了>

トヨタのリコール問題と引当金(その1)

2010年2月4日

 先月公表されたトヨタの過去最大規模のリコールですが、対象車は北米だけでも250万台を超え、その費用は1000億円ほどになるそうです。業績への影響が気になるところですが、メディアの報道によると、品質保証関連の引当金が十分あるので業績への直接的影響は避けられる、とのことです。

 このように聞くと、引当金はリスク管理の為にあるように錯覚してしまいますが、引当金のそもそもの目的は適正な期間損益計算を行うことにあります。

 生産した自動車に欠陥がみつかれば、メーカーは無償でそれを回収して修理をする義務があります。その義務は、車を販売することによってはじめて生じる、いわば販売関連費用です。

 よって、その義務から生じる可能性が高い将来の費用(今回ではリコールに要する費用)の金額を見積もって、車を販売した期の費用とします。といっても、その時実際に費用を支出するわけではないので、引当金と言う形で内部留保されるわけです。

 とはいえ、引当金を取り崩すことで、臨時の巨額損失が業績を直撃ということにはならなくても、多額のキャッシュフロー自体は避けられません。新たにプリウスでも苦情が寄せられていることが明らかになり、トヨタにとっては厳しい年度末になりそうです。

<了>

日本航空と固定資産の時価評価

2010年1月20日

 昨年から、新聞に「日本航空」の4文字を見ない日はないくらいですが、今日(2010年1月20日)の日本経済新聞朝刊のトップ記事もJALが会社更生法の申請を行ったというものでした。

 記事によると債務超過は8,700億円。通常の決算では債務超過ではなかったのに、一転債務超過に。その理由は、飛行機の機材など会社が継続するという前提で簿価評価していたものが、処分するという前提で時価で評価し直したためとのこと。

 会計が成り立つ基本前提を会計公準と呼びますが、その一つがゴーイング・コンサーン(継続企業)の前提です。企業は清算を前提としていないからこそ、買った固定資産を時価ではなく簿価で評価することが認められているのです。

 しかし、厳しい経営環境で、ゴーイング・コンサーンに赤信号がともる企業も続発しています。となれば、固定資産も全面的に時価評価したほうがいいかもしれません。しかしコストはかさむし、悪循環ですね。

 すでにIFRS(国際会計基準)には、固定資産の評価方法の一つに、簿価と同じく時価評価で行う方法(Revaluation model;再評価モデル)があります。時価評価が原則となる時代ももうすぐかもしれませんね。

<了>